見慣れない車が入ってきて、駐車場をのぞくとご見学のお客さまでした。
本堂にご案内してお話しをしておりました。
大まかに言えば、嫁いできたお家の仏教の宗派が合わないということです。曠然苑と聞いて、臨済録の言葉とわかるほどの博学のお方でした。宗派の教義よりは、その地域ごとの習慣に違和感があるようです。
母は真言宗のお寺から嫁いできましたが、年中行事の折のお斎の準備で、手を焼いていました。「臨済宗の作法では、お膳にラッキョを入れてはいけない。」そして、私が小学生1年生で得度を受けさせると決められて、びっくり仰天していました。
「これが臨済宗の習わしだよ。」と言われたら、何も言えません。
その後、私が30歳前後に、よそのお寺にお手伝いに行ったとき、臨済宗でも地域習慣の違いがあり、「親が甘やかすから、息子はうつ病になる。」と言われたものですが、祖母は、「ごめんね。ごめんね。」と臨終の際に言っていたものです。
私はお客さまに、「合わないと思う組織に属していてもストレスを感じるばかりか不幸になります。同じ宗派でも住職によって対応が異なります。憲法で保障された信教の自由があるので、もしうちのお寺がいいと思われるならばお越しください。」とお伝えしました。
「嫁してはその家に従え。」と時代劇の大奥でのセリフにありました。私もあれこれ言っているので、お客さまは毎日お越しになりますが、良縁には恵まれないようです。