仏物己用の罪

名古屋の永平寺別院で、愛知学院大学の菅原研州先生による、道元禅師の「正法眼蔵随聞記」の講話を聴かせていただきました。

道元禅師は、中国へ留学される前に、京都の建仁寺で修行をされたようです。

日本に最初に臨済宗の教えを伝えた栄西禅師のエピソードが書かれています。

建仁寺に、生活に困窮した人が施しを求めにやってきます。そのとき、栄西禅師は、薬師如来の仏像の光背を作るためにとっておいた銅を、困窮者に渡してしまいます。

弟子たちは、栄西に向かって「仏物己用の罪(仏さまの物を着服して自分のものにした。)」となじります。

栄西は、「お前たちの言うことはもっともだ。しかし、貧しい人を助けて地獄へ行くのは本望である。」と説かれました。

うちのお寺に当てはめて見ると、大きな本堂があり、立派な鐘楼がありますが、見栄ばかり先行して、世間のため社会のためという考えが欠如してしまうことが多いのです。

栄西禅師のお心は、建物や仏像そのものにとらわれるのではなく、衆生への救済こそが大切であることを説かれたのではと考えております。

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