本来無一物

お寺の庫裡の北側に裏庭があります。

30年ほど前は、鯉が泳ぐほど水が溢れていましたが、枯れ池となっています。

ドウダンツツジの花が咲いて、一面を照らしております。

手入れをしたわけでもないのですが、きれいに咲く姿を見て、六祖慧能禅師の偈頌(漢詩)を思い出しました。

「菩提もと樹なく     明鏡もまた台にあらず    本来無一物    いずれのところにか塵埃を惹かん」というものです。

「本来の菩提心というものは、樹木のように根の張ったものはない。きれいな鏡のような定型の心もない。この世のものは本来形のないものである。ゆえにチリを掃き取るような必要はない。」と解釈しております。

枯れ池という殺風景なところに、強くしなやかに咲く姿と、「本来無一物」と定型なものを否定された詩とを重ね合わせております。image