十牛図

河野太通老師の「十牛図の講話」をお聴きしてきました。
10章の物語のなかで、「迷っていた牛を探し当てて、飼い慣らして牛がいたことも忘れてしまう。」というのが前回までのストーリーでした。

今回は、悟ることができたからといって、お高くとまっているのではなく、自ら街へ出ていって、お酒を酌み交わしたり、おすそ分けをいただいたりしていくことが、仏さまの教えを広める素地になることが説かれています。

老師は、この世をつなぐ衆生縁、法縁、自然縁という縁に、どう関わっていくのか。縁をつないでいくことが大切であると説かれました。

良寛禅師の因縁話は、共感することがありました。「良寛さんは、お酒を親しむが悪酔いすることもない。酒代を出し惜しむこともない。」というコミュニケーションによって、布教活動をされたようです。

1時間30分の講話の最後に、「身心不二、人境不二、自他不二」と言って、、この世はどこかでつながる縁のもと、根本的に断絶することはないという「不二」ということを強調されました。
「迷うことがあるから、心が動く。離れた思いをするから苦しむ。不二というこの世の真理をつかむことができれば、もう悩み苦しむことはない。」というメッセージで終えられました。

最後に、重大な発表がありました。故山田無文老師の後任として、30年にわたり、この法話の会「无名会」の講義をされてきましたが、今回を機に引退されるのです。後任は、神戸市の祥福寺の僧堂の木村太邦老師がされるようです。
10年近くお聴きしてきて、残念な気がしますが、お元気なうちにご勇退されるという、見事な引き際でした。

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